

KEY PERSON DISCUSSING.
Prefer SHIPSバイヤーと
VIOLETTE ROOMデザイナーによる
ヴィンテージリメイク談義。
Prefer SHIPSが掲げているコンセプトのひとつ、
“自由に楽しく選ぶトレンド&ヴィンテージ”。
その一端を担うブランドVIOLETTE ROOMのデザイナーハマノさんと
Prefer SHIPSのバイヤー渡邊が、
両者の関係、そして今トレンドのヴィンテージリメイクについて語り合います。

INTERVIEW
お互いの良さを
引き出し合える存在。
―Prefer SHIPSがVIOLETTE ROOMのアイテムをセレクトするに至った経緯を教えてください。
渡邊麻子(以下渡邊):ブランドとしてはリメイク以外のコレクションも作っているので、そのニュアンスが反映されているのが魅力ですね。古着を使ってはいるけど、決して古くさいわけではなく、リアルな部分とトレンド感、ナチュラルな雰囲気がいいバランスで混ざっていて、今の時代に合ってるんじゃないかなと。あとは昔からとてもハマノさんの感性を信頼しているので、VIOLETTE ROOMとなら双方のいいところを形にできる気がしました。
―お二人は元々関わりがあったんですか?
渡邊:私が前の職場で働いているときに知り合って、そこからのお付き合いですね。3、4年とか?
ハマノ:いや、もう7年くらい前(笑)。VIOLETTE ROOMを始めた直後からお付き合いさせていただいて、ヴィンテージアイテムのリメイクを始めたのも渡邊さんがきっかけのようなものですから。当時「ヨーロッパのヴィンテージレースを何かと組み合わせたらおもしろそう」と考えていらっしゃって、共通の知人に紹介してもらったのが最初の出会いですね。
―現在のブランドの方向性を決めたのが渡邊さんなんですね。
ハマノ:そう言っても過言ではないくらい。
渡邊:前職時代にリメイクの企画をやることになって、ハマノさんにお願いしたんです。リメイクとか古着好きの人がいると伺っていたので。いまでこそ一般的になりましたけど、当時は女性で古着をリメイクしている方ってほとんどいなかったんですよね。男性は聞いていましたが。
―ハマノさんはなぜ古着のリメイクを始めようと思ったのですか?
ハマノ:素材に触れたときの驚きが、古着の方が強かったです。そんな古い素材と新しい素材をミックスすれば、何かおもしろいものができるんじゃないかと思って。あとは古着の方がおもしろいし、伝わりやすい気がしたので。
―過去に古着屋で働いていた経験があったんですか?
ハマノ:それは特にないです。でも、アメカジブームが到来して、それこそ周りの同級生がさまぁ~ずさんとかダウンタウンさんのような服装をしていたので(笑)、一番身近なファッションだったんですよね。
―でも古着を扱う場合、どうしてもそれ相応の知識が必要になってくると思うのですが。
ハマノ:元々メンズのデザイン科を卒業してスーツを作っていたんです。最初に就職したのもメンズのセレクトショップでしたし。そこも、セレクトショップなのに先輩たちはみんな古着を着ているみたいな(笑)。当然メンズの服を売っていて、その延長で自分の好きなもののひとつとして触れていたので、知識という意味では自然に身に付いた感じですね。
―渡邊さんも以前からヴィンテージはお好きだったんですか?
渡邊:そうですね。若い頃はデニムを中心に。ハマノさんがおっしゃっていたようにアメカジブームがちょうど青春時代と重なっていたので。そして、前職時代にはヨーロッパ古着に出会いました。このアメリカ物とヨーロッパ物が混在したミックス感が、自分の根底にあるのかもしれません。
がんばり過ぎないことこそが、女性らしさを生む。
―ハマノさんはリメイクをする上で、「ここだけは外せない!」というこだわりがあれば教えてください。
ハマノ:ニュアンスですかね。古着というとディテールにこだわる人が特に男性だと多いと思うんですけど、私はトータルのニュアンスの方が大切だと思っていて、いらないと判断すればチェーンステッチだろうとがっつり切っちゃいます(笑)。着たときにニュアンスが出る方が色気がある気がしちゃって。
―対するPrefer SHIPSのショップコンセプトは、“トラッドベースのベーシック”と“自由に楽しく選ぶトレンド&ヴィンテージ”。それらを考慮した上で、どのような基準でVIOLETTE ROOMのリメイクアイテムを選んでいるんですか?
渡邊:ブランドでトラッドやメンズライクな要素を入れることは簡単なんですが、オリジナリティを加えたいとなったときには自社で補完するのは難しいと思っていて。そこで、VIOLETTE ROOMには定番的なミリタリーアイテムとかカレッジスウェットをお願いしています。フェミニンなアイテムと合わせられる、よりオリジナリティのあるものという位置づけですね。
―でも古着は資源として有限じゃないですか? 難しいと感じることはありませんか?
ハマノ:素材として毎シーズン一定量調達するのはとても難しい問題で、常に戦いですね。
―買い付けはご自身で?
ハマノ:はい。ボタンとかレースをヨーロッパで仕入れることはありますけど、基本的には日本のディーラーさんの倉庫に行って探しています。
―こういうのが作りたいけどベースとなる古着がないから作れない、というケースも出てくるわけですよね?
ハマノ:ありますね(笑)。
―現在でも「こういうの作らない?」というお話は2人でされるんですか?
渡邊:今回は十分な時間がなくてできなかったんですけど、常にそういう想いはあります。
ハマノ:最初に「こういう素材があるんだけど何かに使えない?」というところからスタートしたり。
―アイテムの中には“渡邊さん別注”のようなものも存在するわけですね。
ハマノ:それはもちろん!
―ちゃんとコミュニケーションをとった上で一緒にモノ作りをしていけるのはいいですね。渡邊さんから発案する際は、どのくらい具体的にオーダーするんですか? 例えば「カレッジ物を作りたい」なのか、「カレッジ物をこうしたい」なのか。
渡邊:後者ですね。ボディをチャンピオンにしたいというのは伝えてました。私の中でアイテム構成は最初に決めていたんですよ。スウェット、ミリタリー、デニム。という前提があるので、ちょっとリサイズするだけじゃなくて、例えばミリタリーシャツに関してはファーを付けた方がおもしろそう、みたいな。
ハマノ:私としては、Prefer SHIPSの世界観に合うよう、より上品さを加えることを意識しました。ファーはもちろんですし、スウェットのサイジングとか。
―では、リメイクアイテムをPrefer SHIPS流に着こなすコツは?
渡邊:女性らしいアイテムとミックスする。あとはアクセサリーを加えたり。基本的にはメンズライクなものなので、女性が着たときにどうすれば子供っぽく見えないか、カジュアルに見え過ぎないかを意識していただくといいかも。夏にポップなプリントTを店頭に並べたことがあったんですけど、きれいめなジャケットのインナーとして提案したら、お客様にもすんなりと受け入れてもらえました。ちなみに私たちはスタイリング提案をする際に、アイテムを男顔と女顔に分類して、男+男+女、女+男+女のように、メンズライクなアイテムとフェミニンなアイテムを必ずミックスすることを方程式として考えています。普段から古着屋に行くお客様もあまり多くはないと思うので、私たちが発信することで新しい発見をしてもらえたらうれしいですね。
ハマノ:デザイナーがこんなことをいうのも変ですけど、私もあまり真面目に服を着てもらうのが好きではないんです。上から下まで完璧!のような。そういう意味でも、古着のラフなニュアンスは、適度に抜け感のあるスタイリングを完成させてくれるひとつのポイントだと思っています。私の中でのチャーミングな大人の女性とは、そういうものですね。がんばってない感じ。

今後共作したいアイテムは
“Gジャン”。
―お二人にとって、ヴィンテージにまつわる忘れられないエピソードはありますか?
渡邊:以前7万円くらいで501を買ったことがあって、その時の気分じゃないからとフルレングスをカットオフしたんです。しかも赤耳付きだったので、それを残すために、一旦レングスを短くして、最後に元々の裾を繋ぎ直すというかなり凝ったことを。多分、自分にとってそれが最初のリメイクでした(笑)。
ハマノ:私は501は年間で1000本以上手に取っているので、もう見たくないかも(笑)。そういえば、ディーラーさんから袋にまとめられたレギュラー物が送られてくるんですけど、その中には赤耳も入っています。だからといって値段を変えているわけではないので、わかる人にとっては夢がありますね(笑)。
―来シーズン以降、何か一緒につくりたいアイテムはありますか?
渡邊:本当は今回、Gジャンはやりたかったんですよね。次の春にできるといいなと個人的には考えています。
―具体的なイメージは決まっていますか?
渡邊:全部断ち切りにしちゃうとか? それか大きく着るのか。
ハマノ:今ならグランジっぽい感じですかね。断ち切りのフリンジでオーバーサイズ。肩がドロップしていて袖は短め、みたいな。
渡邊:あとはアウターとして着るのは普通だから、ブラウス感覚で着れるといいでしょうね。
―来シーズン楽しみにしています。
デザイナーとバイヤーが、アイテムのポイントと着こなし方を解説。
COLLEGE SWEATSHIRT
スウェット 各¥13,800(+tax)
スタイルに合わせて選べる、
2シルエット展開のカレッジスウェット
ハマノ:タイトとルーズの2パターンのサイジングを用意したカレッジスウェットです。ルーズはトレンド感がある反面、取り入れにくいと思う大人の女性をいらっしゃると思うので、そういう方にはタイトを。あとは衿ぐりをカットすることで、着やすくなるようにしています。
渡邊:衿ぐりが詰まっていると子供っぽくなってしまうので。同じ理由で、あまりポップなカラーのボディも選ばないようにしました。ボルドーやダークグリーンのようなトレンドカラーと、ネイビー、グレーといったベーシックなもの。ザ・アメカジアイテムなので、落ち感のあるフェミニンなスカートのようなやわらかいものとコーディネートしたいです。
MILITARY JACKET
ジャケット ¥16,600(+tax)
+ファーで、
ミリタリージャケットを女性らしく。
ハマノ:ミリタリージャケットの袖口にラビットファーをプラスしつつ、それが目立つよう着丈も詰めています。着たときに美しいシルエットを描くよう、袖だけ少し細くしているのもポイントですね。
渡邊:今回はフォークロアがテーマなので、カーキやボルドー、マスタードのようなこっくりとした色合いを加えてあげるとミリタリー色が薄れて女性らしく着こなせます。実際に自分で着てみて気付いたんですけど、コートのインナーとして着ると袖口からファーが覗いて、ちょうど良いアクセントにもなりました。
Levis 501 & 517
パンツ(左から)[517]¥18,000(+tax)、[501]¥16,000(+tax)
美シルエットに生まれ変わった
デニムの定番。
ハマノ:永遠の定番であるLevisの501と517には、立体的なシルエットになるようセンタープレスをかけました。センタープレスって実は昔からあるディテールで、きっと当時の真面目な人がデニムにアイロンをかけてたんだと思います。スラックスのようにきれいに穿きたくて。さらに501は、どんな人でもスタイルを美しく見せてくれるテーパードシルエットに調整しています。
渡邊:特に517は元々フレアシルエットなので、センタープレスをかけることで印象がソフトになりました。ともに、ツイードのジャケットやニットのような、ボリュームがあるものや着丈が長いものを合わせてあげるとうまくバランスがとれると思います。
Photo [item]_ Hiroyo Kai (stuh)